ルール5ドラフトとは、他球団のマイナーリーグ選手を指名して獲得できる制度です。
「ドラフト」と聞くと、高校生や大学生を指名する6月のMLBドラフトを思い浮かべる人が多いでしょう。しかしルール5ドラフトは全く別物です。
対象となるのは、すでにプロ選手としてマイナーリーグでプレーしている選手です。
この制度が作られた理由はとてもシンプルです。
有望な選手がいても、強豪球団には選手層が厚すぎてメジャーに上がれないことがあります。もし球団が何年もその選手を囲い続けることができれば、選手はチャンスを失ってしまいます。
そこでMLBは、
- 「その選手を本当に将来の戦力として考えているなら40人枠に入れて保護してください」
- 「保護しないなら、他球団が獲得してメジャーで使う機会を与えます」
という制度を作りました。
40人枠とは?
ルール5ドラフトを理解するには、「40人ロースター(40人枠)」を知る必要があります。
MLBの球団は多くのマイナー選手を保有していますが、全員を保護できるわけではありません。
そこで球団は、「この選手は将来メジャーで活躍する可能性が高い」と思う選手を40人枠に登録します。
40人枠に入っている選手はルール5ドラフトで指名されません。逆に、40人枠に入っていない選手は一定年数が経過すると指名対象になります。
どんな選手が対象になるの?
MLB公式ルールでは、以下の年数が経過した選手が対象となります。
- 18歳以下でプロ入りした選手: 5年目のオフまでに40人枠に入らなければ対象
- 19歳以上でプロ入りした選手: 4年目のオフまでに40人枠に入らなければ対象
つまり球団は毎年、「この選手を守るべきか」「まだ大丈夫か」という難しい判断を迫られます。
オフシーズンになると「○○が40人枠入り」というニュースが流れますが、その多くはルール5ドラフト対策なのです。
指名されたらどうなる?
ここがルール5ドラフト最大の特徴です。
通常のトレードやFA移籍とは違い、指名した球団には大きな義務があります。
指名した選手は翌シーズン、原則として26人のメジャーロースターに置き続けなければなりません。簡単にマイナーへ送ることはできません。
もし「やっぱり戦力にならなかった」となった場合は、ウェーバー手続きを経て、元の球団へ返還する必要があります。
そのため球団も気軽には指名できません。本当にメジャーで使える可能性がある選手だけを狙うことになります。
ドジャースを例に考えてみよう
ドジャースはMLB屈指の強豪球団です。
大谷翔平選手、ムーキー・ベッツ選手、フレディ・フリーマン選手などスター選手が並び、さらにマイナーにも有望株が大量にいます。
そのため毎年、「誰を40人枠に入れるのか」が大きな課題になります。
例えば将来有望な投手がドジャースのマイナーにいたとしましょう。能力は高いのですが、上には多くの有望投手がおり、なかなかメジャー昇格の順番が回ってきません。
そしてルール5ドラフトの対象年数を迎えたにもかかわらず40人枠に入らなかった場合、その選手は他球団に指名される可能性があります。
再建中のチームから見れば、「ドジャースでは出番が少ないけれど、うちならメジャーで起用できる」というケースがあるからです。
実際にMLBでは、強豪球団のマイナーからルール5ドラフト経由で新天地へ移り、才能を開花させた選手が数多くいます。
なぜファンは注目するの?
ルール5ドラフトは、一見すると地味なイベントです。しかし、未来のスター選手が隠れていることがあります。
歴史を振り返ると、以下のような名選手もルール5ドラフトをきっかけに飛躍しました。
- ロベルト・クレメンテ
- ヨハン・サンタナ
- ホセ・バティスタ
もちろん一部の選手は元球団へ戻ることになります。
それでも毎年、「この選手は掘り出し物ではないか?」という期待から、多くのファンやスカウトが注目しています。
まとめ
ルール5ドラフトは、簡単に言うと「埋もれている選手を救済する制度」です。
強豪球団のマイナーで順番待ちをしている選手に、新しいチャンスを与えることが目的です。
特にドジャースのような選手層の厚い球団では、有望選手を全員守ることはできません。そのため毎年の40人枠の編成とルール5ドラフトは、表舞台ではあまり見えないものの、球団の未来を左右する重要なイベントなのです。
オフシーズンに「40人枠入り」や「ルール5ドラフト指名」というニュースを見かけたら、「この選手は新たな人生のチャンスを手にしたのかもしれない」と考えると、MLBをより深く楽しめるはずです。
